「脊柱・その他の体幹骨」とは
- 「脊柱・その他の体幹骨」とは?
「脊柱・その他の体幹骨」とは、脊柱(頸椎・胸椎・腰椎・仙椎・尾椎などの椎骨で構成)と、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨などのことをさします。交通事故の後遺障害等級認定では、適切に交通事故被害者の後遺症を認定するために脊柱と、その他の体幹骨を分けて等級認定がされます。
脊柱・体幹骨の後遺障害で多い等級
脊柱・体幹骨の後遺障害の種類
- 脊柱・体幹骨の後遺障害の種類は?
脊柱・体幹骨に関する後遺障害には、変形障害、運動障害、荷重機能障害などがあります。
脊柱・体幹骨の後遺障害の詳細は、下記でご確認ください。
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脊柱・体幹骨の後遺障害は、大きく「変形障害」「運動障害」「荷重機能障害」にわかれます。
脊柱とは
- 脊柱とは?
脊柱とは、椎骨の連続で形成されるいわゆる「背骨(せぼね)」をさします。頚椎(7 個)、胸椎(12 個)、腰椎(5 個)、仙椎(5 個)、尾骨(3 〜 6 個(個人差あり))からなります。
脊柱の読み方
- 脊柱の読み方は?
脊柱は、「せきちゅう」と読みます。
脊柱は頸椎・胸椎・腰椎・仙椎・尾骨からなります。
頸椎とは
頚椎(Cervical spine)には、C1からC7まで7個の骨があります。中央に脊柱管があり、その中に脊髄があります。交通事故外傷などで頸椎部に外力がかかり脊柱管が損傷し脊髄(頚髄(C))に傷がつくと頸髄損傷となります(「脊髄損傷」について)。
交通事故の頸髄損傷
交通事故のような高エネルギー外傷で頸髄損傷を起こすと麻痺が残る可能性が高くなります。脊髄の損傷部位が上の方であるほど症状が重くなる傾向があります。具体的には損傷部位等にもよりますが頸髄損傷では場合により呼吸に必要な筋肉が麻痺し人工呼吸器が必要となります。また四肢や体幹に麻痺が起きることがあります。
胸椎
胸椎(Thoracic)には、T1からT12まで12個の骨があります。胸椎部の脊髄(胸髄(T))に傷がつくと胸髄損傷となります。具体的には損傷部位等にもよりますが胸髄損傷では下肢や体幹の麻痺などがおきます。
腰椎
腰椎(Lumbar)には、L1からL5まで5個の骨があります。腰椎部の脊髄(腰髄(L))に傷がつくと腰髄損傷となります。具体的には損傷部位等にもよりますが腰髄損傷では下肢の麻痺が起きることがあります。
仙椎
仙椎(Sacrum)には、S1からS5まで5個の骨があります。仙椎部の脊髄(仙髄(S))に傷がつくと仙髄損傷となります。具体的には損傷部位等にもよりますが仙髄損傷では膀胱や腸の制御機能の消失が起きることがあります。
尾骨
尾骨(Coccyx)には、人により個人差がありますが3個から6個の骨があります。
脊椎とは
脊椎は、人間の身体を支え、動かし、神経を守る働きをしています。
- 脊椎とは?
脊椎とは、脊柱を構成する骨のことを指します。具体的には、脊椎は、7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎、5個の仙骨(仙椎)、3~6個(個人差あり)の尾骨です。
脊椎の読み方
- 脊椎の読み方は?
脊椎は、「せきつい」と読みます。
「脊柱」と「脊椎」の違い
- 「脊柱」と「脊椎」の違いは?
「脊柱」と「脊椎」の違いは、「脊柱」は背骨(せぼね)全体を指すのに対して、「脊椎」は背骨を構成する個々の骨を指すという違いがあります。
椎骨とは
脊柱は、連続した椎骨で構成されています。
- 椎骨とは?
椎骨とは、脊椎を構成する骨のことです。脊椎骨ともよばれます。椎骨には、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾骨(尾椎)があります。
「椎骨」の読み方
- 「椎骨」の読み方は?
「椎骨」は、「ついこつ」と読みます。
脊柱の後遺障害
頸椎と胸腰椎では主たる機能が異なるため、後遺障害等級認定においては、これらは分けて取り扱われます。頚椎は主に頭部を支持する機能を、胸腰椎は主に体幹を支持する機能を担っています。
障害認定における仙骨と尾骨の取り扱い
仙骨と尾骨は解剖学的には脊柱の一部です。また骨盤骨の構成要素でもあります。ただ機能的には異なり、脊柱は体幹部を支持する役割を持ち、骨盤骨は体幹と下肢をつなぐとともに、一部の腹部臓器を保護しています。
したがって、交通事故の後遺障害として評価すべきかどうかという点では、これらの機能面に注目され、尾骨については、せき柱や骨盤骨の機能を持たないため、その変形は交通事故の後遺障害としては評価されず、一方で、仙骨は骨盤骨の一部として機能するため、その変形が骨盤骨の変形として評価されます。
変形障害
脊柱の変形障害
脊柱に変形障害の後遺症が残った場合に、後遺障害と認定される基準は下表の通りです。
等級の詳細 | 解剖学的部位 | 後遺障害の程度 |
---|---|---|
後遺障害6級5号 | 脊柱・体幹骨 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
後遺障害8級2号 | 脊柱・体幹骨 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
後遺障害11級7号 | 脊柱・体幹骨 | 脊柱に変形を残すもの |
せき柱に著しい変形または中程度の変形を残すものは、後彎又は側彎の程度などにより等級を認定します。
後彎とは
- 後彎とは?
後彎とは、脊柱が異常に湾曲(わんきょく)しており、後方に突き出している状態をさします。猫背のような状態です。kyphosis。
「後彎」の読み方
- 「後彎」の読み方は?
「後彎」は、「こうわん」と読みます。
この際、頸椎と胸腰椎は別々に扱われ、後彎の程度は、せき椎圧迫骨折等による前方椎体高の減少と当該椎体の後方椎体高を比較し、側彎はコブ法による側彎度で判定します。
ただし、後彎又は側彎が頸椎から胸腰部にまたがる場合は、全体の角度又は前方椎体高の減少の程度によって判定されます。
側彎とは
- 側彎とは?
側彎とは、脊柱を正面から見た場合に、左右に曲がっている状態をさします。Scoliosis。
「側彎」の読み方
- 「側彎」の読み方は?
「側彎」は「そくわん」と読みます。
コブ法とは
- コブ法とは?
コブ法(Cobb法)とは、側彎度を測定する方法で、X線写真でせき柱のカーブの頭側と尾側において、水平面から最も傾いているせき椎をそれぞれ特定し、頭側で最も傾いているせき椎の椎体上縁の延長線と尾側で最も傾いているせき椎の椎体下縁の延長線が交わる角度を測定する方法です。
脊柱の側彎を計測する方法
脊柱の側彎を計測する方法には、Cobb法とRisser-Ferguson法の2つがあります。Cobb法はScoliosis Research Society(SRS(*))によって提唱された方法で、この方法で計測された角度はCobb角と呼ばれます。
「脊柱に著しい変形を残すもの」とは
「せき柱に著しい変形を残すもの」とは、X線写真、CT画像、またはMRI画像により、せき椎圧迫骨折等が確認され、次のいずれかに該当する場合をさします。
- (1)2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じている場合。ただし、「前方椎体高が著しく減少した」とは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と、減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上であることを指します。
- (2)1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じ、コブ法による側彎度が50度以上である場合。ただし、「前方椎体高が減少した」とは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と、減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上であることを指します。
「脊柱に中程度の変形を残すもの」とは
「せき柱に中程度の変形を残すもの」とは、X線写真等によりせき椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、以下のいずれかに該当するものをさします。
- 上記「せき柱に著しい変形を残すもの」の(2)に該当する後彎が生じているもの
- コブ法による側彎度が50度以上であるもの
- 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む。)により、次のいずれかに該当するもの。
- 軸椎以下のせき柱を可動させずに(交通事故被害者にとっての自然な肢位で)、60度以上の回旋位となっているもの
- 軸椎以下のせき柱を可動させずに(交通事故被害者にとっての自然な肢位で)、50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
- 側屈位となっており、X線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの。
「せき柱に変形を残すもの」とは
「せき柱に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当する状態を指します。
- エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等を残していることが確認できるもの
- せき椎固定術が行われ、移植した骨が脊椎に吸収されていないもの
- 3個以上の脊椎に対し、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
脊柱の運動障害
脊柱に運動障害の後遺症が残った場合の後遺障害認定基準は下表の通りです。
等級の詳細 | 解剖学的部位 | 後遺障害の程度 |
---|---|---|
後遺障害6級5号 | 脊柱・体幹骨 | せき柱に著しい運動障害を残すもの |
後遺障害8級2号 | 脊柱・体幹骨 | せき柱に運動障害を残すもの |
せき柱に著しい運動障害を残すものとは
「せき柱に著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかにより頸部および胸腰部が強直したものを指します。
- 頸椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存在し、そのことがX線写真等により確認できるもの。
- 頸椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの。
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められ、それによって頸部及び胸腰部が強直したもの。
せき柱に運動障害を残すものとは
「せき柱に運動障害を残すもの」とは、以下の(1)または(2)のいずれかに該当するものを指します。
(1)頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
- 頸椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等が残存しており、X線写真等によって確認できるもの
- 頸椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
(2)頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの
単に疼痛により運動障害を残す場合
X線写真において、脊椎の融合や固定などの脊柱強直の所見がなく、また背部軟部組織に器質的病変の所見がなく、単に疼痛により運動障害を残す場合は、下表のように等級を認定します。
等級の詳細 | 解剖学的部位 | 後遺障害の程度 |
---|---|---|
後遺障害14級 | 神経系統の機能又は精神 | X線写真において、脊椎の融合や固定などの脊柱強直の所見がなく、また背部軟部組織に器質的病変の所見がなく、単に疼痛により運動障害を残す場合 |
脊柱の荷重機能障害
脊柱に荷重機能障害の後遺症が残った場合の後遺障害認定基準は下表の通りです。
等級の詳細 | 解剖学的部位 | 後遺障害の程度 |
---|---|---|
後遺障害6級相当 | 脊柱・体幹骨 | 脊椎圧迫骨折・脱臼、脊柱を支える筋肉の麻痺または項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化が存し、それらがX線写真等により確認できる場合で、そのために頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの |
後遺障害8級相当 | 脊柱・体幹骨 | 脊椎圧迫骨折・脱臼、脊柱を支える筋肉の麻痺または項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化が存し、それらがX線写真等により確認できる場合で、そのために頸部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの |
脊髄損傷による神経系統の障害を伴う、脊柱の障害について
脊髄損傷による神経系統の障害を伴う脊柱の後遺障害については、「神経系統の機能又は精神」の障害として全体的に評価されます。
圧迫骨折等による脊柱の変形で、受傷部位に疼痛がある場合
圧迫骨折等により脊柱の変形が生じて、受傷部位に疼痛がある場合は、より高い等級に従って後遺障害等級が認定されます。
その他の体幹骨とは
「その他の体幹骨」の後遺障害は下記のようにされます。
- 「その他の体幹骨」とは?
交通事故の後遺障害等級認定における「その他の体幹骨」とは、「鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨」をさします。
その他の体幹骨の変形障害
鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨の変形障害について、下表の通り障害等級が認定されます。
等級の詳細 | 解剖学的部位 | 後遺障害の程度 |
---|---|---|
後遺障害12級5号 | 脊柱・体幹骨 | 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨に著しい変形を残すもの |
「著しい変形を残すもの」とは
「著しい変形を残すもの」とは、肌を露出した状態で、明らかにわかる変形(欠損を含む)を指します。 そのため、X線写真によって初めて発見できるような変形は、この基準には含まれません。
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