バイク事故の発生件数
コロナ禍の下、密になりにくい乗り物として、バイクが見直されています。バイクの売上は3年連続で増加しているそうです。若い頃はバイクに乗っていたけれど長く乗っていなかった方がまたバイクに戻ってくる、いわゆるリターンライダーも増加傾向にあります。天気の良い日にのんびりバイクを走らせているとただそれだけで幸せな気持ちになります。
その一方で、バイクは深刻な交通事故を引き起こす可能性のある乗り物でもあります。
警察庁交通局が出している統計資料「令和2年中の交通重傷事故の発生状況」によれば、令和2年中に発生した重症事故2万7774件のうち、バイク乗車中の事故は7246件で、重症事故に最もつながりやすい乗り物はバイクという統計結果がでています。
バイクは、自転車や歩行者より速度が出る一方、自動車に比べて安全面で劣るため、当然といえば、当然の統計結果と言えます。
バイク事故に遭ってしまった場合に、どのようにしたら正当な補償を受けられるかについて解説していきます。
バイク事故に多い事故態様・過失割合の考え方・残りやすい後遺症
バイク事故に多い事故態様
(1)右折自動車 対 直進バイク
バイクは車体が自動車に比べて小さいので、車間距離が近づいていても、実際よりも遠くに見えることがあります。例えば、バイクが交差点を直進しているときに対向車線にいる自動車が直前に右折してくる事故が多いのは、このような錯覚が原因の一つと考えられます。
また、バイクが前方の大型車両との車間距離を詰めすぎたため、右折車両からの発見が遅れるということも起こりがちです。右折車両からすると、大型車両が交差点を通過したので右折しようとしたら、その後から予想外に小さなバイクが出てきたので、衝突を避けられなかったという具合です。
バイクと自動車が衝突すると、バイクの運転手は路上にたたきつけられるなどして重傷を負い、治療が終わった後も後遺症が残るということが多くあります。バイクの運転手が死亡することも珍しくありません。
(2)車線変更
バイクは、車幅が細いため、渋滞中のときに、自動車の横をすり抜けて走行することもあります。その際に、自動車が進路変更をして、横からバイクに衝突する事故も多く起こります。渋滞中ではなく、単に片側2車線の道路を走っている際に、隣の車線から車線変更してきた自動車に衝突されることもあります。
横からの衝撃によって、バイクが転倒し、地面に半身をこすりつけるような状態になると、肩、腰、膝などを損傷する重傷を負い、後遺症が残ることがあります。
(3)原動機付自転車
バイクの中でも危険が大きいのは原動機付自転車、いわゆる原付バイクです。最高速度が時速30キロに制限されている原付バイクは、交通の流れに乗れないため、道路の左端を低速で走行せざるを得ません。必然的に後続車両に次々と追越しをかけられることになり、その分事故発生のリスクが高まります。
また、原付以外のバイクよりさらに車体が小さいため、大型トラックなどからの発見が遅れ、大事故につながることもあります。
(4)その他
工作物への衝突や転倒などの単独事故もバイク事故に多い態様です。
バイクは二輪しかなく不安定ですので、自動車に比べると天候や路面状況などの影響を受けやすく、転倒リスクも高い乗り物です。これがバイクに単独事故が多い原因の一つと考えられます。また、自動衝突回避システムが日進月歩の自動車と比べると、バイクのそれは劣ります。これは技術的な問題もさることながら、自動ではなく自分で操作するから楽しいというバイクの特性(バイクは趣味性の高い乗り物であると言われる所以です)に依るところも大きいように思われます。
単独事故を防ぐには、とにかくバイクの速度を抑えることが重要です。特にカーブ手前では十分な減速が必要です。少し古いシミュレーションですが、実際に発生した死亡事故のうち約3割は、規制速度超過がなければ死亡事故に至らなかったであろうという報告もあります。
ほかには、交差車両に見落とされて出会頭衝突される、左折車両の死角に入り巻き込まれる、なども車体が小さなバイクにありがちな事故態様です。対策としては、自動車から見える位置にバイクを持ってくるようにして、自動車側にバイクの存在を認識させることが重要です。
過失割合の考え方
バイク事故では、示談交渉で過失割合についての折り合いがつかず、裁判になることがよくあります。バイクも自動車と同様に走行しているので、相手の自動車の方が悪かったと場合でも、バイクにいくらかの過失は認められてしまうことはあります。問題は過失割合がいくらかという点です。
警察が作る実況見分調書は過失割合の判断においても有力な証拠になるのですが、運転手が亡くなった、あるいは大怪我のため入院した場合、運転手の立会いがないまま実況見分が行われてしまうことがあります。
また、バイクのドライブレコーダー搭載率は自動車と比べるとまだ低いため、過失割合を判断する決め手に欠けるきらいがあります。
このように過失割合判断の材料に乏しい一方、バイク事故の賠償額は高額に至ることが多いため、過失割合を厳しい目で見られがちです。特に運転手が死亡した場合などは、加害者の証言のみを元に過失割合を徹底的に争われることさえあります。
少しでも自分の過失割合を小さくするには、しっかりと、警察署に人身事故の届出をして事故状況の捜査をしてもらうことです。また、ドライブレコーダーを取り付けておくことも重要です。ドライブレコーダーの標準的な価格は2~3万円です。
仮に自分の過失が認められる場合でも、自分の保険に「人身傷害保険(じんしんしょうがいほけん)」という保険が付いている場合には、自分の過失割合に対応する補償は自分の保険から、相手の過失割合に対応する補償は相手の保険から、それぞれ補償を受けられる可能性があります。
バイク事故で残りやすい後遺症
バイク事故では、死亡のほか、重度の後遺症が残るような重傷を負う可能性が自動車事故よりも高くなっています。
怪我の内容としては、脳損傷、多発骨折といったバイク事故に限らず生じる怪我のほか、腕神経叢の引抜き損傷のようなバイク事故特有の怪我もあります。
車体、シートベルト、エアバッグなどによって守られている自動車の運転手とは異なり、バイクの運転手はヘルメットやプロテクターこそあるものの、生身に近い状態で運転します。それにもかかわらず自動車と変らない速度で走行するのですから、バイク事故が起きた場合に重篤な結果が生じることは容易に想像できます。勢い賠償額も高額となりがちです。
(1)醜状障害
顔面に傷痕が残ってしまった場合、後遺症として認定されることがあります。
傷痕は、運動能力に影響を与えることはありませんが、営業職など人の前に立つ仕事をする場合には、業務の支障となります。また、対人関係に悪影響を与えることもあります。
顔面ではなくても、日常生活で見える範囲に傷痕が残っている場合には、それが、慰謝料の対象となることがあります。
傷痕の長さによっては、示談交渉で後遺症として認められないこともありますので、裁判をするべきかどうか、弁護士にご相談ください。
(2)可動域制限
関節付近の骨を骨折した場合などには、治療終了後も関節が元どおり曲がらないことがあります。
可動域制限の程度が大きいほど、労働能力に及ぼす影響も大きくなります。
また、骨折の程度や回復状況によっては人工関節になってしまうこともあります。
(3)骨折後の疼痛
骨折した箇所に痛みが残存する場合も、これが後遺症として認められることがあります。
難しいのは、骨折自体は治っているのに、痛みが残っている場合です。この場合、骨折の癒合状況や骨折部位によっては、痛みが後遺症として認定され、後遺症の慰謝料が増えることがあります。
骨折があるケースでは、弁護士が交渉することにより増える慰謝料の金額が、むち打ちなどに比べて高額になりやすいので、事故直後から弁護士に相談をされることをお勧めします。
(4)脊髄損傷
バイク事故で転倒した場合などに脊髄を損傷してしまうことがあります。
一般に、損傷した脊髄の位置が脳に近いほど、麻痺などの症状が生じる範囲は広くなります。
(5)脳出血と高次脳機能障害
バイク事故で頭部を強打すると、脳出血が起きることがあります。そして、意識が戻ったあとに、集中力や記憶力の低下などの症状が生じる高次脳機能障害という後遺症が残ることがあります。
高次脳機能障害の後遺症認定においては、弁護士とご家族が協力して、被害者の日常生活を訴えることが、非常に重要です。なぜなら、高次脳機能障害の被害者は、自身の事故前後の変化を自覚していないことが多いからです。
(6)腕神経叢損傷
腕神経叢損傷とは、脊髄から伸びる腕の神経が損傷する傷病で、腕神経叢が損傷すると、上肢の機能障害などの後遺症が残ることがあります。
手術によって回復することもありますが、筋力が戻らないこともあり、労働能力に大きな影響を与えることがあります。腕神経叢損傷の後遺症認定では、腕神経叢損傷があるから何級という形式的な審査ではなく、肩から手にかけての可動域、筋力や神経の損傷状況などを踏まえた総合的な審査によって後遺症の等級が判断されます。
したがって、後遺症の申請前に、一度、弁護士に相談をするのが良いでしょう。
(7)死亡事故
死亡事故では、被害者の証言が得られないため、過失割合について納得できないことが多くあります。被害者が死亡している場合には、遺族が裁判をすることで、被害者が受けた慰謝料の支払いを求めることができます。
死亡事故を避けるためには、適切なサイズのヘルメットやプロテクター(胸部用、背部用、肩用、肘用、膝用などがあります)を付けるべきです。ヘルメットやプロテクターは、それなりの金額のものを選びましょう。加えて、自分の身体のサイズに合ったものを選びましょう(試着してから購入することをお勧めします)。
ちなみに、死亡原因となった受傷部位の割合を見ると、約43.3%が頭部で、約26%が胸部です(令和2年・警察庁調べ)。この2箇所をヘルメットとプロテクターで保護することが、死亡事故を避けるうえでいかに有効かわかると思います
(8)変形障害
バイク事故で肩を強打した場合に鎖骨を骨折することが多くあります。骨折がなおっても、鎖骨に変形があり、その変形が、裸体になっても分かる場合には、それが後遺症として認定されます。後遺障害等級としては、12級5号になります。
また、変形部に痛みが残っていれば、その痛みも併せて評価されます。
変形障害については、実際に、この変形がどれだけ仕事に影響を与えるかについて、裁判で争いになることも多いため、治療中から、弁護士がサポートすることが有効です。後遺症の等級自体は、裸体で変形があるかないかという客観的に分かりやすい基準で認定されますが、それが賠償金にどう反映されるかについては、専門的な交渉が必要となります。
バイク事故の後遺症の後遺障害等級の認定方法
バイク事故で後遺症が残った場合には、まず、その後遺症が、示談交渉の金額の指針となる後遺障害等級に該当するのかどうかの認定を受ける必要があります。後遺症が残った場合、まず、後遺障害申請を行い、後遺障害認定を受ける必要があります。
後遺障害認定の方法には、任意保険会社が主導して行う事前認定という方法と、被害者が自賠責保険に対して後遺障害認定を直接求める被害者請求(直接請求、16条請求などとも呼ばれます)という方法があります。任意保険会社が必要資料を適切に収集し後遺障害申請を行ってくれるなら事前認定によって後遺障害認定を受けても一定の結論は出ますが、必要な検査にもれがないかどうか、少し心配です。
そこで、弁護士が後遺障害申請を被害者の代わりに行う場合は、自ら必要資料を収集して被害者請求の方法で後遺障害申請を行うことが多いです。被害者請求によって後遺障害認定を受けた場合、認定された後遺症の等級に応じて、自賠責保険金が支払われます。この自賠責保険金は、後述する後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料の両方の性質を含む保険金です。被害者が受け取れる賠償金は、この自賠責保険金だけではありません。さらに、自賠責保険金に上乗せされる賠償金の交渉を任意保険会社とする必要があります。
バイク事故の後遺症の補償の計算方法
バイク事故に遭った方への治療期間中の補償内容としては、治療費、通院交通費、休業補償、入通院慰謝料などがあります。バイク事故の怪我は重傷であることが多いので、治療期間は長くなり、その分、治療費、休業損害、入通院慰謝料は高額になる傾向があります。
そのように長期間治療したにもかかわらず、怪我が治りきらずに後遺症が残った場合、その補償も問題になってきます。後遺症の補償内容としては、逸失利益と後遺障害慰謝料があります。
逸失利益の計算では、事故前の収入額を前提に、後遺症の影響により、労働能力が何パーセント喪失し、その状態が今後何年続くか、という考え方をします。
たとえば、事故前の年収が500万円で治療終了時に40歳の方が、手首の骨を骨折し、12級6号の後遺症認定を受けた場合、次のように逸失利益を計算するのが一般的です。
基礎収入 500万円
労働能力喪失率 14%(後遺症12級の基本的な喪失率です)
労働能力喪失期間 27年(通常、治療終了時の年齢から67歳までの期間が対象となります)
ライプニッツ係数 18.327(27年の中間利息控除に用いられる係数です)
計算式 500万円 × 0.14 × 18.327 = 1282万8900円
後遺障害慰謝料については、認定された後遺症の等級に応じた基準額があります。たとえば、14級なら110万円、12級なら290万円という具合です。ただし、これらはあくまでも基準額ですので、具体的事情による増減はあります。14級なら110万円、12級なら290万円という金額は、裁判基準や弁護士基準と呼ばれる基準額で、裁判において基準となる金額です。
裁判に至らない示談交渉の段階では、任意保険会社は、任意保険基準という裁判基準や弁護士基準と異なる独自の低い基準額を元に慰謝料を提示することがほとんどです。場合によっては、自賠責保険金だけで終わらせようとする任意保険会社の担当者も存在します。そのため、示談交渉においては、裁判基準(弁護士基準)と任意保険基準のいずれが妥当かを巡ってシビアな駆け引きが行われます。
また厳密には後遺症の補償とは異なりますが、バイク事故によって重篤な後遺症が残った場合、介護関係費用が問題となることがあります。たとえば、バイク事故により寝たきり状態になった方を家族が自宅で介護する場合、付添介護費、介護用品・器具等購入費、家屋・自動車等改造費などが補償の範囲に含まれることがあります。
バイク事故の解決を弁護士に依頼するメリット
バイク事故で後遺症が残ったときに弁護士に依頼するメリット
バイク事故の被害者が保険会社と戦う場面は、大きく分けて5つあります。
この5つの場面で、保険会社まかせにしていると、本来は受け取れたはず補償額から、何十万円、何百万円、ときには何千万円単位で損をすることがあります。
弁護士は、被害者の味方になり、これらの場面で、保険会社と交渉を行い、経済面をサポートしていきます。
また、同居のご家族が自動車保険に「弁護士費用特約」を付けている場合、バイク事故についての弁護士費用がすべてこの特約で賄われることがあります。
弁護士法人サリュとは?
弁護士法人サリュは、全国10支店で、交通事故被害者の救済を行っている弁護士事務所です。交通事故の解決件数は、全国で1万5000件を超えており、バイク事故の解決については、多くの解決実績があります。相談料は無料です。
解決事例の紹介
(1)バイク事故で後遺症が問題となった事例
バイク事故の後遺症の補償は、後遺障害等級という後遺症の重さを段階分けしている等級を土台に計算されます。1等級違うと、百万円単位で賠償金が変わってきます。この事例においては、もともとの14級という保険会社の等級認定が、6等級あがって、8級の認定となりました。6等級もの等級変更はなかなか少ないケースですが、このケースが示している事実は、保険会社の等級認定が必ずしも正しいとは限らないということです。そして、後遺症の等級は、異議申立てという手続きや、裁判で、変更できる場合があるということです。
(2)バイク事故で過失割合が問題となった事例
・事例 Yさん : 原付バイクで転倒事故
・保険会社の対応 過失割合5:5を主張
・サリュの解決 高等裁判所への控訴により 過失割合3:7に変更
バイク事故の後遺症の補償の計算は、損害額×相手方の過失割合という計算式で行われるため、自分の過失割合が高いほど、相手が払う金額が少なくなってしまいます(人身傷害保険という保険がある場合には別途解決が可能です)。
そのため、保険会社の言いなりの過失割合ではなく、警察の捜査記録や車両の損傷状況を分析し、事故態様を明らかにする必要があります。バイク事故では、被害者の意識が失われていることも多く、被害者1人では保険会社と交渉できないこともあります。弁護士法人サリュでは、過失割合の裁判手続きについても注力しています。
バイク事故に備えて任意保険に加入しましょう
前述のように、バイク事故では、運転手の方が大怪我を負う可能性があります。バイク事故により大怪我を負ってしまったにもかかわらず、加害者側が無保険であったり、過失相殺によって大幅に賠償金を減額されてしまったりすると、十分な補償を受けられないため、被害者側でも備えをしておくことが重要です。
バイク運転手の方は是非とも任意保険(対人賠償、対物賠償=無制限に加えて、人身傷害保険と弁護士費用特約も)に加入しましょう。
さいごに
これまで詳しく説明してきましたが、自動車事故とは色々と異なるバイク事故に遭ってしまった場合、ご自身で対応されるのは大変だと思います。
できるだけ早く弁護士にご相談されることお勧めします。
相談は、対面、電話、オンラインなどを選べます。
日本全国どこからでもご相談いただけます。交通事故は弁護士へお気軽にご相談ください。バイク事故の後遺症に詳しい弁護士がご相談に対応いたします。
北海道 | 北海道 |
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東北 | 青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県 |
関東 | 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県 |
中部 | 新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県 |
近畿 | 三重県、滋賀県、奈良県、和歌山県、京都府、大阪府、兵庫県 |
中国 | 岡山県、広島県、鳥取県、島根県、山口県 |
四国 | 香川県、徳島県、愛媛県、高知県 |
九州 | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
バイク事故ご相談は、弁護士法人サリュへ。弁護士法人サリュはバイク事故を含む交通事故解決実績20000件以上の安心してご依頼いただける弁護士法人です。
弁護士法人サリュはバイク事故を含む交通事故解決実績20000件以上の安心してご依頼いただける弁護士法人です。