近親者固有の慰謝料請求権は、法律で定められている
慰謝料は、多大な精神的苦痛を受けた場合に請求できるものです。配偶者やお子様などをなくされた場合、遺族の精神的苦痛も非常に大きなものとなりますので、民法では近親者に慰謝料請求権を認めています。
近親者とは?具体的に誰が請求できるのか
苦痛をうけた身内であれば誰でも請求できるという訳ではありません。民法で
- 父母
- 配偶者
- 子
について慰謝料請求権が認められています。
基本的にはこれらの立場にある人が対象となりますが、特別な身分関係が存在した場合には父母、配偶者、子でなくても認められる場合があります。
民法711条(近親者に対する損害の賠償)
民法711条
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者および子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
近親者固有の慰謝料の相場は?
近親者固有の慰謝料の相場は、自賠責基準によって支払われるか、弁護士基準によって支払われるかによって、金額は大きく異なります。下記から詳細をご確認ください。
「父母」「配偶者」「子」以外でも認められることがある特別な関係の近親者とは
この「被害者の夫の妹」のケースでは、その妹に元々障害があり、長年同居して被害者によって世話を受けており、本来であればそれ以降も庇護のもと生活することを期待できたはずなのに、それが受けられなくなったことの精神的苦痛は甚大であるとして慰謝料を請求しうるとされています。
内縁の配偶者の場合は?
では内縁の配偶者の場合、どうでしょうか。内縁関係であると相続人でないので、何も請求できないのではないかと思われる方もいらっしゃると思います。
- Q内縁の配偶者の場合、近親者固有の慰謝料はもらえる?
- A
前述の障害をもった妹のケースで、父母・配偶者・子に同視すべき身分関係があり、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者が固有の慰謝料請求をしうるとされました。
内縁の配偶者についても裁判例で固有の慰謝料を認めるものがあります。東京地裁平成27年5月19日判決は、約29年の間、ほぼ住居を同一として生活し,同じ生計で生活をしており、親族や勤務先も夫婦と同じように接してきた事案において、内縁の配偶者に固有の慰謝料として500万円の慰謝料を認めました。
したがって、内縁の配偶者にも固有の慰謝料は認められる場合があります。ただし、事故当時同居していたからといって全て内縁関係として補償されるわけではなく、裁判例のように、①同居期間や、②同一家計になっているか、③親族や勤務先等対外的社会的に夫婦として扱われていたかなどが考慮され判断されます。
近親者固有の慰謝料は被害者が死亡した場合しかもらえないのか
民法の条文上では「生命を侵害」したものとされています。
基本的には死亡してしまった場合に請求できるものではあるのですが、「死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められる」ほどの精神的苦痛を近親者が受けた場合には、被害者が死亡していなかった場合にも近親者固有の慰謝料が認められることがあります。
ただし極めて重症を負ってしまったなど認められるケースはある程度限られてきます。
高次脳機能障害で介護を要する後遺障害1級、介護を要する後遺障害2級、後遺障害3級の等級となった場合は近親者に固有の慰謝料が認められる場合が多く、4級以下の場合は判断が分かれています。
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