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はじめに

自損事故や故障で壊れたバイクを修理する場合、バイクユーザーである顧客は、最初から修理代を自分で払うことを覚悟しているので、バイクショップとトラブルになることはあまりないように思います。しかし、事故でバイクが壊れた場合、全損か分損か、過失割合、対物超過特約の有無などによって、バイクショップの顧客が負担する金額が複雑になることがあり、顧客とバイクショップとの間でトラブルになることもあります。  この記事では、顧客とバイクショップがトラブルにならないよう、事故にあったバイクの修理の流れについて、法律上の観点から解説します。また、示談で落としがちな買替諸費用や、保管料の取決め方法についても解説します。

事故に遭ったバイクの修理の流れ

まずは、事故に遭ったバイクをバイクショップや修理工場に持ち込んだときの顧客とバイクショップと保険会社の契約関係を整理します。

事故車両の持ち込み

バイクが事故に遭うと、バイクショップや修理工場にバイクを移動させます。そして、修理するにはいくらかかるかを見積もってもらいます。通常は、この見積もりに際して、事故の当事者に保険がある場合には、保険会社のアジャスターと呼ばれる調査係が、修理見積が正当か調査をすることが多いです。さらに、保険会社のアジャスターは、事故に遭ったバイクの中古価値も調査をします。中古価値が修理代より安い、つまり、全損(ぜんそん)の状態にあると、相手の保険会社は、原則として、中古価値の範囲でしか修理代を払わなくていいというルールになっているからです(例外として対物超過特約という保険を事故の相手が使えるケースでは中古価値を超えて修理代が保険から払われるケースもあります)。

このように、事故の保険がからむ場合には、バイクがバイクショップや修理工場に持ち込まれたからと言って、すぐに修理をすることが決まるわけではありません。

バイクを持ち込んだ顧客とバイクショップとの間での修理契約の決定

そして、アジャスターの調査の結果、全体の修理額と保険会社の支払額が判明し、事故被害者の自己負担額も分かり、事故被害者が、修理を決断したときには、修理が開始されます。もちろん、事故被害者が、保険会社の支払額にかかわらず、修理の着工を急いでいる場合には、調査の前に修理に着工されるケースもあります。

バイクの修理の契約は、民法上は、請負契約というカテゴリーに入ります。請負契約は、契約書という書類の作成が絶対に必要というわけではありませんので、修理内容と請負の費用の金額の口頭の合意があれば、バイクショップや修理会社は修理に着工してもよいことになります。もちろん、口頭だけだと、あとで修理の内容や修理費用、保管料などについてもめることもありますので、きちんと契約書を作成しておくことが望ましいです。保管料についても、日額がいくらになるのか、いつから発生するのか、きちんと契約書に記載しましょう

修理されたバイクの顧客の引き取り方法

バイクの修理が終わると、事故被害者がバイクを引き取ることになります。バイクショップに持ち込むときには、バイクは事故のせいで壊れているのでレッカーで運ばれることも多いですが、修理後はバイクは直っているので所有者がバイクショップまで取りに行くことが通常と考えられます。もし、修理済みのバイクをレッカーで自宅まで運んだとしても、自走できるバイクのレッカー費用については保険で払われない可能性もあるので、手出しは覚悟することになります。

事故に遭ったバイクの修理代金の支払のタイミング

修理代の支払時期について、民法633条という法律では、引き渡しと報酬の支払は同時となっています。しかし、当事者間の合意で、これと違う取り決めをすることは自由です。

修理が終わったのに、いつまでもバイクを引き取りにいかないと、バイクショップなどでは修理も買替もされないのに、事故車両の保管だけ続けることになり、営業損害を受けることがあります。こういったことがないよう、引き取り時期については顧客とバイクショップが約束をしておくべきです。

引き取りを放置していると、高額な保管料の請求となり、顧客とバイクショップとの間でトラブルになることもあります。事故の当事者に保険がある場合でも、保険からの保管料の支払が認められるのは、修理やアジャスターの調査のための一定期間に限られます。

バイクの修理が終わった場合には、バイクの所有者である顧客は、保険会社と過失でもめていたとしても、バイクショップとトラブルにならないように、バイクショップと話しあって、早めに引き取りをしましょう。

顧客がバイクを修理しない場合は?

バイクショップや修理会社に持ち運んだものの、そもそも修理できない状態であったり、被害者自身の手出し金額や事故車両への愛着の喪失から、修理をせずに買い替える場合も多くあります。

修理をするのか、購入を前提として下取りをしてもらうか、それとも新たな購入はせずに廃車にするのか、これを最終決定するのは、事故被害者である顧客です。

バイクショップによっては、修理も買替もされなかった場合に、顧客に保管料の請求をするケースもあります。バイクショップによる保管は、アジャスターの調査のための必要な行為ですので、裁判例でも、バイクの保管料について、事故加害者に対して支払を命じたものも多くあります。ただし、修理後の引き取りの放置と同じで、アジャスターの調査が終わり、あとは、所有者が修理をするのか買い替えるのか廃車で終わるのか悩んでいるだけの状態が長期間続いていると、それは加害者のせいではなく、所有者の都合でバイクショップに迷惑をかけているとして、一定期間経過後の保険料については、顧客の自己負担で終わるということもあります。

例えば、事故の日から112日間保管をしてもらっていた事例であっても、保管料として相手に請求できるのは57日分(修理金額が判明した時期から2週間程度経過した時期まで)と限られた裁判例もあります(東京地裁令和2年5月29日判決:自保ジャーナル2075号90頁)。そして、過失が被害者にもある場合には、さらに保管料の手出しが増えていきます。なお、保険会社のアジャスターの調査が遅れた事案としてさらに長い保管料を認めた事例(東京地裁平成24年11月30日判決:自保ジャーナル1888号106頁)もありますが、これはアジャスターの調査が遅れるといった特殊な事例に関するものです。

事故が原因でバイクを修理する場合には、自分のミスでバイクを傷つけた場合と異なり、保険もからんで選択肢が増えるので、バイク所有者の最終判断が遅れがちです。

過失割合について揉めている場合には、顧客が弁護士に無料相談をするなど、事故当初から、見通しをつけることが非常に重要です。

バイクショップと保険会社との間に契約は存在する?

保険会社は、通常、対物保険という保険が動いている場合に、アジャスターをバイクショップに派遣し、修理代の調査や時価額の調査を行います。

バイク事故の被害者としては、バイクショップと保険会社の間で交渉が進んでいるので、当事者意識が薄れることもあります。

しかしながら、あくまで保険会社は、対物保険の支払の必要性の調査をしているだけであって、バイク所有者が店に支払う金額のうち、一定割合を金銭でバイク所有者に返済するという性質しかありません。つまり、修理を依頼しているのは、保険会社ではなく、バイク所有者になります。そのため、もし、バイクショップや修理会社に対して、未払があると、それは、あとで、バイク所有者自身に請求がきてしまいます。

バイク事故の被害者は、自分のバイクをバイクショップに預かってもらっているうちは、自らが契約主であるという自覚をもって、バイクショップと連絡を取り合うことが重要です。

バイクの修理代金の顧客の手出し額(被害者負担額)の具体例

たとえば、バイクの中古価値が20万円で、修理代が30万円だった場合に、修理をするときの被害者の手出し額(被害者負担額)を考えてみましょう。

過失がある場合

過失が5対5である場合、修理代は30万円かかりますが、保険からでるのは中古価値の20万円の過失割合の50%である10万円のみになります。つまり、修理代30万円のうち、10万円しか保険で出ないので、残りの20万円は手出ししないといけません。

ただし、事故の相手に、「対物超過特約」という特約があると、中古価格を超過して、つまり、中古価格ではなく、修理代をベースに補償してもらうことができます。この場合も過失の修正はされるので、受け取れるのは修理代30万円の50%である15万円となり、残りの15万円は手出しとなってしまいます。

過失がない場合

バイクの中古価値が20万円で、修理代が30万円のケースで、被害者に過失がない場合でも、相手の保険会社は、原則として中古価格の20万円の範囲でしか補償してくれません。

ただし、事故の相手に、「対物超過特約」という特約があると、中古価格を超過して、つまり、中古価格ではなく、修理代をベースに補償してもらうことができます。今回の無過失の事案では先ほどのケースと違い、過失の修正はしなくていいので、修理代30万円の100%である30万円が補償されます。

対物超過特約は、被害者ではなく加害者が入っている保険です。そのため自分が入っているときに、それが役に立つのは、自分が加害者になってしまったときです。対物超過特約は、事故の相手が入っていると助かる保険と覚えておきましょう。なお、自分を守るための保険は、車両保険と弁護士保険です。

相手のために入る保険が、本来の賠償保険の役目ですので、万が一のために、是非ご加入をご検討ください。そして、自分の防御として、車両保険と弁護士保険のご加入をご検討ください。近年では、同居の家族の1人でも、自動車保険で弁護士保険(日常事故型)に入っていると、子どもが自転車にひかれたときなども保険料が上がらずに弁護士費用がでる契約類型も増えています。

顧客がバイクを買い替えるときの買替諸費用について

全損の場合

全損の場合は、相手方保険会社は、以下の計算式で賠償をすることになります。

 

( 中古価値 + 買替諸費用 )× 加害者の過失割合

 

 通常、保険会社の最初の提案では、前者の「中古価値」の範囲で終わっていることが多く、後者の「買替諸費用」が入っていないことが多くあります。

どうして保険会社から買替諸費用を確認してもらえないかというと、証拠は被害者が集めなければならないという立証責任の問題と、保険会社としては、新しいバイクをいくらで買ったのかどうか分からないということが理由です。

したがって、新しいバイクを買い替えたときの契約書に、全体価格だけではなく、買い替えの諸費用(例えば、登録料や税金など)を別途計上されていると、この契約書が買替諸費用の証拠となるので、顧客は、買替のときには、買替後の契約書を保険会社に提出すると、賠償額が増える可能性があります。

全損ではない分損の場合

分損の場合、つまり、修理代の方が中古価値より安い場合、顧客としては、修理ができるのは分かっているけれど、事故車両には乗りたくないので、買い替えるという判断をする場合があります。

買い替えるときには、買替のための諸費用がかかりますが、これは、加害者には請求できません。分損の場合には、修理代の見積もり相当額を受け取って、これを買い替え費用に充てることになります。

バイクの修理期間中や買替中の代車について

通勤などにバイクを利用していたのに、事故でバイクが使えない場合、同等のバイクの代車料について、代車の必要性があれば、事故加害者に対して、加害者の過失割合分について請求が認められます。

ただし、バイク事故では、バイク事故の被害者側にも一定の過失割合が認められることが少なくないため、手出しして有料の代車を利用するよりは、自家用車や公共交通機関を利用して通勤することも多いと思われます。

その場合でも、バイクのガソリン代の燃費は、自家用車や公共交通機関よりは安いことから、2週間程度の通勤代の増額部分について、相手保険会社に賠償を認めた裁判例もあります(東京地裁平成21年11月30日判決:ウエストロージャパン)。

バイク事故の過失割合や慰謝料の相談は弁護士へ

保険会社同士による示談の問題点について

バイク事故の被害者に過失がある事案においては、被害者の保険会社が一定の範囲で、加害者側の保険会社と交渉をしてくれます。

しかし、保険会社同士の交渉では一定の限界があります。物損について示談をすると、通常は、そこで決めた過失割合が保険会社の前提条件となって、人身の慰謝料の示談にも影響を与えることがあります。

また、保険会社同士のバイク事故の示談では、例えば、過失割合の判断について、刑事記録の検討までしていないといったことが頻繁にあります。

最近では、相談だけなら無料で回答する弁護士事務所も増えており、また、300万円以下の範囲の弁護士費用を補填する保険料が上がらない弁護士保険というものも普及してきました。保険会社によっては、弁護士保険があるにもかかわらず、あまり、この利用を勧めない担当者もいるようですが、保険料も上がらないので被害者にとって弁護士費用保険を使うデメリットがありません。

過失割合などで、もめているケースにおいては、まずは、弁護士に無料相談をするべきです。

弁護士法人サリュとは?

弁護士法人サリュは、全国10支店(東京大阪神奈川埼玉千葉名古屋静岡神戸山口福岡)で、全国の交通事故被害者の救済を行っている弁護士事務所です。交通事故の解決件数は、全国で2万件を超えており、過失割合の調査やバイク事故の解決については、多くの解決実績があります。もちろん、相談料は無料です。

バイク事故でお困りの際には、是非問合せください。

バイクショップのための交通事故顧問契約

バイクショップ様へ

ここまで、バイク事故が起きたときの修理の流れについて、解説をしてきました。

当法人は、交通事故の解決件数が2万件を超えておりバイク事故に関しても、多くの解決実績があります。交通事故に関する相談は全て無料で対応させていただいております。

本記事で説明させていただいたとおり、バイク事故の解決には、バイクユーザーの冷静な判断が必要です。

しかし、まだまだ、バイク事故被害者が、事故直後から弁護士に相談されるケースは少なく、物損が終わってから、もしくは、ある程度、物損を放置した後に、ご相談に来られることが少なくありません。

事故に遭ったバイクの物損の放置は、バイクショップ様にとっても、キャッシュフローを悪くさせるばかりか、最悪の場合、被害者とショップ間でトラブルになるなどの経済的な損失となります。

そのため、当法人としては、バイクショップ様に交通事故に関する顧問契約をご締結いただき、バイクショップ様から、いつでもお気軽にご相談いただける顧問契約を広めたいと考えております。

バイクショップ様向け顧問契約の内容

バイクショップ様との顧問契約の内容は、次の3点です。

  1. バイクショップ様の債権の回収業務及び契約書チェック
  2. ご紹介のバイクユーザーからのバイクに関する無料相談の実施
  3. ご紹介のバイクユーザーからのご依頼について正規料金からの割引

費用については、①の業務量に応じて、個別に検討させていただきますので、まずは、お気軽にお問い合わせください。

日本全国どこからでもご相談いただけます。交通事故は弁護士へお気軽にご相談ください。バイクの修理に詳しい弁護士がご相談に対応いたします。

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