交通事故の裁判について解説します。
交通事故の裁判について
交通事故で加害者が負う責任
交通事故の加害者は次の3つの責任を負います。
- 民事責任(民法・自動車損害賠償保障法(自賠法))
- 刑事責任(刑法・道路交通法)
- 行政責任(道路交通法)
このうち裁判となるのは民事と刑事です。民事責任を問うのが民事裁判で、刑事責任を問うのが刑事裁判です。このうちここでは民事裁判について取り上げます。
民事責任の内容
交通事故における民事責任とは、加害者が被害者に与えた損害を金銭により賠償しなければならないという損害賠償責任を指します。運転をしていた人以外に、使用者や車の保有者なども民事責任を負う場合があります。
損害賠償として、具体的には治療費や通院交通費、入通院に対する慰謝料、休業損害、後遺障害に対する慰謝料や逸失利益などについて損害額を計算し、加害者側の保険会社と話し合って過失割合があれば過失割合も考慮した上で損害賠償の金額を決めます。
交通事故における民事裁判
加害者と損害賠償の金額などで話し合っても解決ができず、訴訟を提起した場合、民事裁判となります。民事裁判は弁護士などの資格がなくても提起することができます(交通事故を弁護士に依頼せず、本人だけで裁判を進めることを本人訴訟といいます)。
交通事故の裁判の流れ
*簡易裁判所と地方裁判所では裁判の流れが異なる部分があります。ここでは地方裁判所のケースをご紹介します。
訴訟の提起
管轄の裁判所に訴状を出します。交通事故の損害賠償請求では、通常、被害者の住所地を管轄する裁判所に訴訟を提起でき、請求額(訴額)が140万円以下の場合は簡易裁判所に、請求額が140万円を超える場合は地方裁判所に訴訟を提起します。
訴訟を提起した側が原告となり、提起された側が被告となります。提出した訴状は裁判所によって確認され不備があれば訂正するように求められます。
口頭弁論期日の指定・呼出
訴状に不備がなければ、裁判所は第1回口頭弁論期日を指定して被告に訴状を送達します。訴状を受け取った被告は答弁書を提出します。
口頭弁論期日
第1回口頭弁論期日においては、原告が訴状を陳述し、被告が答弁書を陳述します。第2回目以降の弁論期日で原告と被告は証拠を出し合い、事実上・法律上の主張をしていきます。
裁判上の和解(裁判所による和解の勧告)
判決が言い渡される前にも、裁判所はいつでも和解を試みることができるとされており、和解の勧告を行うことがあります。これによって和解が成立するケースも多くあります。和解が成立すると裁判は終了となります。
判決言い渡し
争点や証拠の整理ができると、通常は当事者や証人の尋問が行われて、弁論が終結し、判決の言い渡しとなります。
交通事故の裁判の期間
判決を得る場合
交通事故の民事裁判では、訴訟の提起から判決までどんなに早くても半年はかかります。通常は判決が出るまでに1年程度は時間がかかると考えておいた方が良いでしょう。ケースによってはさらに長期化します。
裁判上の和解をする場合
ただし判決を待たずに裁判所による和解の勧告に従って裁判上の和解が成立した場合は、裁判の期間はもっと短くなります。
交通事故の裁判の費用の相場
申立手数料
訴訟を提起する際に、申立手数料を収入印紙で収めます(手数料が100万円を超える場合は収入印紙のかわりに現金で納付も可能)。
訴額 | 手数料額 |
訴額が100万円までの部分について10万円までごとに | 1000円 |
訴額が100万円を超え500万 円までの部分について20万円までごとに | 1000円 |
訴額が500万円を超え1000 万円までの部分について50万円までごとに | 2000円 |
訴額が1000万円を超え10億円までの部分 について100万円までごとに | 3000円 |
訴額が10億円を超え50億円までの部分について500万円までごとに | 1万円 |
訴訟の目的の価額が50億円を超える部分について1000万円までごとに | 1万円 |
裁判所の手数料の詳細
・民事訴訟費用等に関する法律別表第1(第3条、第4条関係)
https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/tesuuryou/index.html
・裁判所の手数料額早見表(単位:円)
予納郵便切手
申立手数料に加えて、裁判所から郵便物を送付してもらうための郵便料を予納します。現金または郵便切手で納めます。
例えば東京地方裁判所の場合、令和元年10月の郵便料金改定後の送達等に使用するための予納郵便切手の額は、当事者(原告と被告)がそれぞれ1名の場合は6,000円です。
そして、当事者が1名増すごとに2,178円ずつ加算されます(ただし原告が複数でも弁護士など共通の代理人がいる場合は加算されません)。
参考:東京地方裁判所への民事訴訟事件・・・の訴え提起における郵便切手の予納額について
証人、鑑定人又は通訳人、参考人等に対する給付
申立手数料や予納郵便切手のほか、必要な場合は証人等の旅費・日当・宿泊料などを負担します(民事訴訟費用等に関する法律)。
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「交通事故事件処理の道標」(P275~P314)
・訴状の構造
・請求の趣旨には何を記載するか?
・請求の原因には何を記載するか?
・よって書きとは何か?
・訴状のサンプル
・自賠法3条の有用性
・事故態様・責任原因の書き方
・既払控除、結語(よって書き)
・請求の趣旨の書き方
「交通事故案件対応のベストプラクティス」(P130)
・示談で終了するべきか?訴訟を提起するべきか?
裁判になると、医療記録をすべて取られ、予想できない訴訟リスクが生じます。
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