高齢者に逸失利益は認められる?
事故当時就労し収入があった場合はもちろん、実際には就労していなくても、就労意欲があり、実際に就労する能力と蓋然性があれば、高齢者であっても逸失利益が認められる可能性があります。
逸失利益は就労可能年齢までに本来ならいくら収入があったはずであったかということについて計算しますが、基本的に就労可能年齢は67歳までとされます。現在67歳を超えている場合や、もう間もなく67歳になるという場合にはその年齢の平均余命の2分の1の期間が就労可能期間となります。
高齢者に後遺障害が残ってしまった場合の逸失利益
老人・高齢者も、後遺障害が残った場合の逸失利益はもらえるの?
高齢者も、本来受け取れるはずであったのに後遺障害が残ってしまったことによって減ってしまった収入が後遺障害による逸失利益となります。
基本的に前年の年収を基礎収入として、何パーセント労働能力を失ってしまい就労可能期間は何年かが計算の対象となります。ただ、将来の収入を先に受け取るためにそこから利息を控除しなくてはならず、ライプニッツ係数という係数を用いて最終的な逸失利益を算出します。
逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×就労可能期間に対応するライプニッツ係数
前年の収入がない場合は基礎収入ってどうするの?
事故当時無職であっても、休業損害と同様に、その方の健康状態も考慮したうえで就労の可能性があればその分の逸失利益も認められることがあります。過去数年の年収の実績や事故後の再就職の就労の実績から、仮に事故がなかった場合に得られた事故後の年収に仮説をたてて基礎収入を計算します。
その際、年齢別平均賃金を考慮することもあります。たまたま事故の前年が無収入だったとしても、過去の就労状況等から将来の就労の可能性があったことを証明していきます。
高齢の主婦に後遺障害が残った場合の逸失利益は?
休業損害の場合と同様に家族のために家事労働をしていれば現金収入を得ていなくても逸失利益を請求できます。高齢の場合には家事の分担量が多い場合には年齢別平均賃金を基礎収入としますが、本人の健康状態、どの程度家事を行っていたかなどによっては更に減額となる場合があることも休業損害と同様です。
高齢者が死亡してしまった場合の逸失利益
交通事故で死亡しなければ得られたはずの将来の利益(死亡事故の逸失利益)は、後遺障害が残った場合には後遺障害により失った労働能力の割合をかけて計算するのと違い、労働能力喪失率はいわば100%ですので基本的に全ての将来の利益です。
しかし、死亡によってかからなくなった生活費もあります。したがってそれを控除しなくてはならず、計算式は以下のようになります。
逸失利益=基礎収入(年収)×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
生活費控除率は事案によっても変動しますが、被害者の立場によって以下の目安となります。
- 一家の支柱 30~40%
- 女性(主婦・独身・幼児等を含む)30%
- 男性(独身・幼児等を含む)50%
高齢の主婦が死亡してしまった場合の逸失利益は?
死亡の場合も後遺障害による逸失利益と同様に、現金収入はなくても、逸失利益を請求できます。基礎収入についても同様に賃金センサスの年齢別平均賃金を用います。家事の程度によって年齢別平均賃金を減じることもありますが、主婦であれば、逸失利益がゼロとなることはなく、補償されます。
年金生活だった場合の逸失利益について
被害者である高齢者の方が、年金によって生活していた場合、50%~70%と、基準より生活控除率が高くなることがありますが、一部の年金を除き、国民年金の老齢年金、老齢厚生年金など年金収入も逸失利益として請求できます。年金については得られる期間は死亡するまでの間ですから、就労可能年数ではなく平均余命期間を用いて計算します。
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