お怪我の治療が終わると、加害者の保険会社から「示談の提案書」が送られてきます。示談の提案書とは、保険会社が「この金額で示談してください」と被害者に提案をするための書類です。この書類は、いわば「保険会社のお願い」であり、強制力はありません。もし提案内容に不満があれば、保険会社に交渉することができます。

しかし、示談の提案書には難しい計算式やたくさんの数字が並んでいるため、「どうやって見れば良いのか分からない」というご意見をよく耳にします。

それでは、保険会社から送られてきた提案書の内容は、どうやって確認すれば良いのでしょうか?金額に納得できない場合はどうしたら良いのでしょうか?

今回は、保険会社から示談の提案書が送られてきた場合のチェックポイントや対応方法について紹介します。

示談書は一度サインしてしまうとひっくり返すことはほぼ不可能

そもそも、どうして示談の提案書を自分でチェックしなければいけないのでしょうか?どうして保険会社から送られてきた示談書にそのままサインをしてはいけないのでしょうか?

お客様の中には、「保険会社が作成した示談書なのだから、金額に間違いはないだろう」と信頼して、保険会社が送付した提案書の内容を確認することなくそのまま了承してしまう方がいらっしゃいます。

しかし、保険会社の提案書には、必ずしも妥当な金額が書かれているとは限りません。むしろ、適切な相場よりも低い金額が記載されている可能性の方が高いのです。

保険会社にとっては、示談金が安くなればなるほど、その分だけ会社の利益となります。残念ながら、保険会社は慈善団体ではありません。このため、「まずは相場よりも低い金額を提案してみて、相手が文句を言わなければこのまま安い金額で示談しよう」と考えるモチベーションが働きます。

お客様が一度示談書にサインしてしまうと、その後に金額が間違っていることが発覚しても、示談をやり直すことはほぼ不可能です。示談書にサインすることによって、示談書を遵守する義務が生じるからです。将来的に後悔しないためにも、示談書にサインする前に、きちんと提案書の内容を隅から隅までチェックしておくことが大切です。

示談書の読み方

それでは、保険会社から送られてくる示談の提案書は、どのようにチェックすれば良いのでしょうか?

示談の提案書はいくつかの項目に分かれていますので、項目ごとに一つずつ読んでいきましょう。

①治療関連費

交通事故でお怪我をされた場合は、治療にかかるお金が賠償の対象となります。病院に支払った治療費だけでなく、病院に通うための「通院交通費」や、ギプスやコルセット等の「装具費」、家族に付き添ってもらった場合の「付添看護費」等が含まれます。これらが全て記載されているかどうか、一つずつ確認しましょう。

通院交通費については、「実際に使用したバスや電車の代金」が対象となります。お怪我が重症なお客様については、「タクシーの代金」も認められます。ただし、常にタクシーの代金が認められるわけでなく、お客様のお怪我の重さや病院の所在地等を総合的に考慮したうえで、「タクシーを利用する必要性が高い」と判断された場合にのみ認められます。例えば、医師がタクシーで通院するように指示した場合には、タクシー代が認められる可能性が高くなりますので、その事実を主張して交渉します。

治療のために入院をした場合には、細々とした備品が必要となります。例えば、タオルや洗面用具、下着やパジャマ等です。これらの備品を購入するためにかかったお金は、「入院雑費」として請求できます。入院中は慌ただしいため、領収書を捨ててしまったお客様も多いと思いますが、その場合は1日1,500円として入院雑費を請求できます。例えば、入院期間が10日間の場合は、1万5,000円の入院雑費を請求できます。領収書を保存していないお客様も、入院雑費が記載されているかどうかチェックしておきましょう。

以上のとおり、「治療関連費」という一つの項目の中に、様々な費用が含まれています。漏れが無いかどうか、丁寧に確認しておきましょう。

②休業損害

事故にあった場合、入院や通院のためにお仕事を休まなければいけないことがあります。お仕事を休んだことによって収入が減ることを、「休業損害(きゅうぎょうそんがい)」といいます。「休業補償(きゅうぎょうほしょう)」と呼ばれることもあります。

サラリーマンの場合は、事故にあう前の直近3ヶ月分の給与明細をもとに、休業損害を計算します。休業損害の計算は、手取りの金額ではなく、税金や保険料が控除される前の金額を用いて行います。手取りの金額で計算されていると示談金が安くなってしまいますので、正しく計算されているかどうか確認しましょう。

専業主婦(主夫)の方も、お怪我によって家事や育児等に支障が出ている場合には、休業損害を請求できます。専業主婦(主夫)の方も、必ず休業損害の項目をチェックしておきましょう。

③傷害慰謝料

「傷害慰謝料」とは、交通事故でお怪我を負ったことに対する慰謝料です。「入通院慰謝料」と呼ばれることもあります。

傷害慰謝料の相場は、自賠責基準で計算する場合は、1日4,300円です。自賠責基準とは、「被害者に対する最低限の補償」を行うための基準です。「最低限」の補償を目的としているため、裁判実務における適正な賠償金の相場と比べると、大幅に低い金額となっています。

このため、傷害慰謝料が自賠責基準で記載されている場合は、弁護士に依頼することによって慰謝料が増額する可能性があります。傷害慰謝料が自賠責基準で記載されている場合は、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

④後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、事故によって後遺傷害が残ったことに対する慰謝料です。「後遺障害」とは、病院で適正な治療を受けたにもかかわらず、症状を完全に治癒させることができず、将来にわたって体の不具合が残ることをいいます。後遺障害は、「後遺症」とも呼ばれます。

後遺障害の慰謝料は、「後遺障害等級」に応じて算定されます。後遺障害等級とは、「後遺障害の程度」に応じて決定される等級であり、第1級から第14級に分かれています。第1級が最も重症であり、第14級が最も軽症です。等級数が少なければ、それだけ後遺障害が重いということを意味するため、慰謝料が高額となります。

傷害慰謝料と同様に、後遺障害慰謝料についても、自賠責基準(最低限の補償)と裁判基準(裁判実務における適正な慰謝料の相場)では、大きく金額が異なります。

例えば、むち打ちの後遺症で第12級に認定された場合、自賠責基準の後遺障害慰謝料は94万円ですが、裁判基準の慰謝料は290万円です。自賠責基準と裁判基準では、196万円もの差があります。

このため、自賠責基準で後遺障害慰謝料が記載されている場合には、弁護士に依頼することによって慰謝料が増額する可能性が高いと考えられます。後遺障害慰謝料が自賠責基準で記載されている場合は、示談書にサインする前に弁護士にご相談ください。

⑤家屋改造費

重度の後遺障害が残ったために自宅の玄関や寝室、トイレ等をバリアフリーに改築することが必要になった場合には、その改築費用も賠償の対象に含まれます。示談の提案書では、「家屋改造費」などの項目で記載されています。既に自宅の改築が終わっている場合は、領収書の金額と提案書の金額が一致しているかを確認しましょう。これから改造を行う場合は、専門業者に見積もりをお願いして、見積書に記載された金額と一致しているかを確認しましょう。

⑥逸失利益

後遺障害によって将来的な収入が減少した場合、「逸失利益(いっしつりえき)」として賠償の対象となります。例えば、営業部で外回りの仕事をしていた人が、事故の後遺障害によって外出が困難となり、事務職に異動することになった場合、給与が下がることがあります。このように将来にわたって収入が減少することを、「逸失利益」といいます。

逸失利益の計算も、後遺障害慰謝料と同様に、後遺障害等級をもとに計算します。一般的に、後遺障害が重症であればあるほど、逸失利益は多額となります。

逸失利益は、「実際にどれくらいの収入が減少しているか」ということを考慮に入れて計算します。このため、実際に収入が減っていない場合には、示談の提案書に「逸失利益」の項目が設けられていないことがあります。

しかし、実際に収入が減少していない場合においても、逸失利益を請求できる可能性があります。例えば、将来的に昇進や昇給等において不利益を受けるおそれが高い場合や、職場の上司から退職や転職を示唆されているような場合には、逸失利益が認められる可能性があります。ただし、このような交渉には高度な専門知識が必要となるため、弁護士にご相談することをお勧めいたします。

⑦死亡慰謝料

「死亡慰謝料」とは、事故によって被害者がお亡くなりになったことに対する慰謝料です。死亡慰謝料には、2種類あります。「お亡くなりになった被害者ご本人の慰謝料」と、「ご遺族の慰謝料」です。2つの慰謝料がどちらも記載されているかどうか、確認しておきましょう。

死亡慰謝料についても、自賠責基準か裁判基準かによって、金額が大きく異なります。例えば、お亡くなりになった方に専業主婦(主夫)の配偶者がいるケースを考えてみましょう。ご本人の慰謝料とご遺族の慰謝料を合計した金額は、裁判基準で計算すると、およそ2500万〜2800万円です。しかし、自賠責基準で計算すると950万円です。

死亡慰謝料が自賠責基準で記載されている場合は、弁護士に依頼することによって、大きく慰謝料が増額する可能性があります。自賠責基準で死亡慰謝料が記載されている場合は、弁護士にご相談ください。

提案書の内容にご不明な点があれば、お気軽にご相談ください

今回は、保険会社から示談の提案書が送られてきた場合のチェックポイントや対応方法について紹介しました。

提案書の内容に少しでも疑問点や不安点がある場合は、お気軽に当事務所の無料相談をご利用ください。当事務所では、交通事故に関するご相談は無料で受け付けております。弁護士費用を気にすることなく、提案書の内容について弁護士にご質問ください。

法律相談は、気になることや不安なことについて、気軽に弁護士に尋ねる機会です。準備や持ち物などに気兼ねすることなく、リラックスしてお越しください。

当事務所では、日頃から交通事故に力を入れて取り組んでいます。交通事故の研修や勉強会等を定期的に開催し、研鑽にも励んでおります。無料相談のご予約は、お問い合わせフォームから申し込んでいただくことが可能です。お電話でのご予約も受け付けております。提案書の内容に疑問点や不安点がある方は、ぜひ一度無料相談をご利用ください。