人身事故に遭ったら被害者は多大な精神的苦痛を受けるので、加害者へ「慰謝料」を請求できます。

交通事故の慰謝料は弁護士に示談交渉を依頼すると大きく増額されるので、一定以上のけがをされたなら弁護士に依頼しないと経済的に損をしてしまう可能性が高くなります。できるだけ高額な慰謝料を受け取りたいなら、示談交渉を弁護士に依頼する方が有利といえます。

今回は交通事故で慰謝料を増額したいとき、弁護士に依頼すべき理由をご説明します。

交通事故の慰謝料とは

交通事故の慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金です。被害者が「けがをした場合」や「死亡した場合」に発生します。

事故でけがをすると被害者は恐怖や痛みを感じますし治療に苦痛を伴うケースも少なくありません。死亡したら誰しも無念ですし、言葉では表現し尽くせないほどの精神的苦痛を受けるでしょう。そこで交通事故で受傷したり死亡したりした場合、加害者へ相応の慰謝料を請求できるのです。

一方で交通事故の中でも「物損事故」のケースでは慰謝料が発生しません。特別に大切にしていた車や希少価値のある車でも、物が壊れただけでは慰謝料が発生するほどの精神的苦痛を受けないと考えられています。

交通事故の慰謝料の種類

交通事故の慰謝料には以下の3種類があります。

  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料)

被害者がけがをしたときに発生する慰謝料です。入通院治療を受けた期間に応じて計算されます。

  • 後遺障害慰謝料

治療を受けてもけがが完治せずに後遺症が残り、自賠責保険(共済)で「後遺障害認定」を受けたときに支払われる慰謝料です。後遺障害が残ったケースでは「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の両方が払われるので慰謝料が高額になります。

  • 死亡慰謝料

被害者が死亡したときに遺族に払われる慰謝料です。

弁護士に依頼すると慰謝料が増額される理由5つ

被害者が自分で示談交渉をするより弁護士に依頼した方が慰謝料は増額されます。理由は主に以下の5つです。

  • 弁護士と保険会社とでは慰謝料の「計算基準」が異なる
  • 慰謝料の増額要素を主張できる
  • 慰謝料の不当な減額を防げる
  • 弁護士に依頼すると過失割合が適正になる
  • 弁護士に依頼すると後遺障害慰謝料が高額になりやすい

弁護士と保険会社とでは慰謝料の「計算基準」が異なる

一般にはあまり知られていないのですが、弁護士と保険会社とでは慰謝料の「計算基準」が異なります。弁護士が計算するときには「弁護士基準」を適用しますが、任意保険会社が計算するときには「任意保険基準」を適用します。

  • 弁護士基準

弁護士や裁判所が利用する法的な基準です。法的な根拠のある数字であり、被害者にはそもそも弁護士基準によって計算された慰謝料を請求する権利が認められています。

  • 任意保険基準

任意保険会社が独自に設定している計算基準です。それぞれの任意保険会社によって微妙な違いはありますが、だいだい似たような数字になります。どこの保険会社でも弁護士基準と比べると大幅に金額が下がります。

弁護士基準と任意保険基準を比較すると、弁護士基準の方が大幅に高額になります。おおまかにいうと入通院慰謝料の場合に1.3~1.8倍程度、後遺障害慰謝料の場合2~3倍程度、死亡慰謝料の場合には1,000万円程度の差額がつきます。

被害者が自分で示談交渉をすると法的根拠のない「任意保険基準」をあてはめられて慰謝料を減額されますが、弁護士に依頼すると適正な「弁護士基準」が適用されるので慰謝料が一気に増額されます。

具体例 むちうちのケース

わかりやすいようにモデルケースでどのくらい差額が発生するかみてみましょう(以下、この記事で紹介する事例は計算方法を把握するためのモデルケースであり、実際にあったものではありません)。

交通事故でむちうちになり、6か月通院して後遺障害14級、保険会社からは以下の内容の慰謝料を提示されたとします。

傷害慰謝料…643,000円

後遺障害慰謝料…40万円

合計1,043,000円

弁護士に裁判を依頼し、後遺障害14級を維持すると、弁護士基準が適用されて以下の通りとなる可能性が高いです。

傷害慰謝料…89万円

後遺障害慰謝料…110万円

合計199万円

結果として947,000円の増額となり、当初の約2倍の慰謝料を払ってもらうことができます。

慰謝料の「増額要素」をあてはめられる

交通事故の慰謝料は、一律ではありません。同じようなけがや後遺障害の事案でも、ケースに応じて被害者の受ける精神的苦痛の度合いが異なるからです。以下のように被害者の精神的苦痛が特に強いと考えられるケースでは、慰謝料が増額または休業損害が補償されます。

  • 内定がとれていたのに被害者が事故によって就職できなくなった
  • 学校に通っていたのに事故によって出席が足りず被害者が退学した
  • 被害者が入学、留学できなくなった、留年した
  • 被害者が事故によって流産、中絶した
  • 加害者が悪質(ひき逃げや飲酒運転、無免許運転など)

外貌醜状などの後遺障害で逸失利益が払われない、あるいは減額された場合にも逸失利益が減額された分慰謝料が増額される傾向があります。

ただ被害者が自分で対応すると「どのような増額要素があるのか」「自分の場合にどこまで主張できるのか」などがわからないので、本当は増額すべきケースでも無視されてしまう可能性が高まります。

弁護士に相談すると、ケースごとの慰謝料増額要素をきちんと抽出して加害者側へ主張し、最大限増額させるよう交渉を進めます。これにより、数百万円以上の開きが発生するケースも少なくありません。

具体例 被害者が流産したケース

モデルケースでどのくらいの差額が発生するか、ご説明します。

交通事故に遭って流産し、7か月通院。保険会社からは入通院慰謝料として769,000円の提示を受けたとします。

弁護士が対応すると、弁護士基準をあてはめるとともに流産したことについての慰謝料を足して、150万円程度にまで増額できる可能性があります。

慰謝料の不当な減額を防げる

交通事故で被害者が保険会社と交渉すると、慰謝料を不当に減額される危険があります。

保険会社は高額な慰謝料を支払うと損失につながるので、できるだけ減額したいと考えるからです。たとえば以下のような場合、保険会社は慰謝料を減額するよう主張するケースが多々あります。

  • 被害者に持病がある、特殊な身体的特徴がある

椎間板ヘルニアなどの持病があると、むちうちになっても「持病のせいで悪化した」と言われて慰謝料を減額を主張してくる可能性が濃厚です。

  • 被害者が事故とは無関係にうつ病になった

被害者がうつ病になると「うつ病になったから治療が長びいた」などと言われて慰謝料を減額されるケースが多々あります。

  • 被害者が家族や友人の車に乗せてもらっていた

被害者が家族や友人の車に乗せてもらって事故に遭うと「無料で車に乗せてもらって危険を引き受けていたのだから損害発生の責任を負うべき」と主張されて慰謝料を減額される可能性があります。

ただ、上記のような保険会社の主張は適切とは限りません。本来は減額すべきでないケースでも不当に大きな減額を主張される事例が散見されます。弁護士が示談交渉に対応したら、不当な減額は認めないので結果として慰謝料が増額されます。

弁護士に依頼すると過失割合が適正になる

交通事故で適正な慰謝料を受け取るには「過失割合」が非常に重要です。過失割合とは交通事故当事者それぞれの損害発生に対する責任割合です。

交通事故では加害者に100%の過失があるとは限りません。被害者側にも落ち度があるケースもあります。被害者にも過失があるなら被害者が加害者へ請求できる賠償金の金額を減額しないと不公平なので、加害者へ請求できる賠償金が減額されます。これを「過失相殺」といいます。

交通事故で被害者の過失割合が大きくなると、「過失相殺」によって慰謝料を大幅に減額されるので要注意です。

ところが保険会社は被害者に不当に高い過失割合を割り当てて賠償金を減額しようとするケースが少なくありません。本来は被害者の過失割合が2割程度の事案でも「4割」などといわれる事例があります。

弁護士が対応すれば、法的な過失割合算定基準をあてはめるので保険会社による不当な主張を認めません。保険会社が被害者に高めの過失割合を割り当てようとしても、弁護士に示談交渉を依頼すると適正な基準をあてはめて過失相殺を小さくし、結果的に慰謝料を増額できます。

具体例 保険会社の過失割合に納得できなかったケース

交差点で交通事故に遭いましたが、加害者側の保険会社から「被害者にも3割の過失がある」と言われたとしましょう。

弁護士が当時の状況を分析した結果、過失割合は9:1が望ましいことが判明し、そのまま示談交渉を行って過失割合を9:1として認めさせたとします。

当初保険会社からは入通院慰謝料として869,000円(通院10か月分)、そこから3割過失相殺して608,300円を提示されていても、弁護士に依頼したことによって弁護士基準をあてはめて入通院慰謝料を145万円とし、過失相殺1割として最終的に1,305,000円を払ってもらえます。

結果として自分で示談交渉をしていたときの2倍以上に慰謝料が増額される可能性があります。

弁護士に依頼すると後遺障害慰謝料が高額になりやすい

交通事故で高額な慰謝料を受け取るには「後遺障害認定」が極めて重要です。後遺障害慰謝料は高額なので、後遺障害が認定されて後遺障害慰謝料が支払われると慰謝料総額が一気に増額されるのです。

ただ後遺障害認定は専門的な手続きであり、交通事故被害者が自分で対応すると適正な等級の認定を受けられない可能性が高くなります。多くの交通事故被害者は任意保険会社へ後遺障害認定を任せてしまう「事前認定」を利用しますが、それでは任意保険会社が適切な対応をしてくれるか定かではありません。

弁護士に相談すれば、事案に応じた適切な後遺障害認定方法を選択できます。難しい事案では交通事故被害者が自分で後遺障害認定の手続きを行う「被害者請求」を利用して、積極的に後遺障害の認定を目指します。適切な等級の後遺障害認定を受けることにより、高額な後遺障害慰謝料の支払を受けられるので、結果的に受け取れる慰謝料総額が大きく増額されます。

具体例 むちうちで後遺障害が残ったケース

交通事故でむちうちになり、日常的に背中や肩などの各部位に痛みやしびれを感じる状態になったとしましょう。自分で後遺障害認定の手続きをしたところ、後遺障害には該当しないとされて後遺障害慰謝料は0になり、保険会社から入通院慰謝料の479000円のみの支払いを提示されたとします。

納得できないので弁護士に異議申立を依頼し、後遺障害14級が認められたら入通院慰謝料も弁護士基準が適用されて通院期間に応じた裁判基準である67万円に増額、後遺障害慰謝料が110万円払われて、合計176万円の慰謝料を受け取れます。自分で交渉したときと比べると3.6倍以上に増額される可能性があります。

まとめ

交通事故で適正な慰謝料を勝ち取るには弁護士によるサポートが必要です。弁護士に依頼するとそれだけで慰謝料が大幅に増額されるケースが多いので、まずはお気軽にご相談ください。